ども、オダです。
前半に引き続き、HPFの感想を書きます。
今回は、5校(関西福祉科学大学・大谷・堺西・千里・大阪産業大学附属)です。


関西福祉科学大学高校『主人公してみませんか?』

会場に入るなり、最近のアニソンが流れている。いかにも今時の高校生らしい。恋人にプロポーズできない冴えない男が、謎の魔女(実は妹)に異世界に連れていかれて勇者となってその世界を救うといった、最近のアニメでやっているようなストーリーだ。これは実は、妹が兄に自信をつけてもらおうと演劇部の仲間と結託して兄をだます、というとても演劇的などんでん返しが用意されているのだが、異世界に行ったという描写が出演者の衣装以外では描写されていないので、どんでん返しが活きない。講評でも言わせてもらったが、チープでもいいから何か美術的変化があった方が良かったと思う。実は演劇部が用意したものなのだからリアリティが薄くても許される。要は場所が変わったと思わせる描写が必要なのだ。素舞台に照明変化だけでは心もとない。あと演出家がADという謎の役柄で客席からチャチャを入れるが、それだけのポジションに収まっていたのは勿体ない。実は演劇部の芝居だったんです、の更に先のどんでん返しに使えたと思うのだが。あと、リアルタイムで流れているアニソンをそのまま使うのは安易すぎる。ドラゴンクエストのテーマはRPGの定番だから許されるが、進撃の巨人のOPはダメ。自ら観客の集中力を割いてくださいと言ってるようなものだ。選曲も作品作りの重要な要素なんです。


大谷高校『若葉夢』 

最初に断っておくが、この作品に関してはゲネプロを拝見させてもらったので、あまり細かい感想は控えさせてもらう。高校のサーカス部のみんなが、唯一曲芸ができる部員が不在の中ショーをする、という内容だ。全体としてはゲネプロとはいえ、クオリティが高い。 ピエロ達の衣装とメイクもしっかりしていて、作品の世界観にすんなり入ることができた。ショーも仕掛けやアンサンブルも出来が良い。はっきり言って他校とワンランク高い作品を提供している。ただ、僕が気になったのは、そのクオリティの高さだ。最後まで見終えてどうもすっきりしない。別にテーマがどうのこうの言うつもりはない。気になったのは、設定として「曲芸できない自分達ではサーカス部として成立しないから、エリカを探そう」だったはずだ。しかし、実際目の前で高校の部活としては十分ショーとして成立しているという矛盾だ。比較対象がプロのサーカスなら勿論全然ダメなんだろうが、高校生レベルだったら、正直ここまでやれば十分「よくやった」である。一生懸命クオリティを高めた結果、作品の設定を壊してしまっているのだ。これは如何なものかと思う。作品を創っていく過程でどうして気付かなかったのか?演出を場当たり的にやっている印象を受けてしまった。基本的な設定は大事にしないと観客の混乱を招きかねない。もしかしたら、高校の部活ではなく、地方の経営が傾いたサーカス団という設定だったら気にならなかったのかもしれない。


堺西高校『純喫茶』

 昔ながらの喫茶店で起こるちょっと不思議な物語をオムニバス仕立てで見せる。客入れ時からマスターがいて客がいて、これから始まる喫茶店でどんな物語が始まるのか期待感が高まる。マスターも客も緊張して、こそこそしているのが気になる。もっと自然体にしていればいいのに(まあ、これは難しいかもしれないが)と思う。芝居も自然なトーンで進んでいくのだから、喉が乾いたら自分でコーヒー淹れて飲んでもいいだろうし、トイレに席を立ってもいいだろうし、そうした方が逆に観客も気が抜けるというものだ。芝居はとても作品に真摯に向き合っているのが分かる。丁寧に芝居を積み上げていこうとしている。なので、余計に細かい粗が気になる。例えば、第1話のカップルの会話のネタばらしあたりの女性の反応が唐突だ。徐々に真相に気がついていく変化が丁寧に出せていたらもっと盛り上がっていた。第2話のクイズ出すくだりも、唐突に芝居チックになるので観ていてギョっとする。それまで日常の芝居なのに「なんで?」って思う。第4話の見えない妻とマスターのやりとりも会話になっていないのだが、聞いていて会話しているような雰囲気を出せていれば作品に深みが出る。ひとつひとつの会話の積み重ねが物語を紡いでいくような作品は、ちょっとした気持ちのすれ違いが命とりになるので気をつけましょう。 


千里高校『マブイ’13』 

1970年代の日本を舞台にした作品。沖縄返還やら安保やらが一つキーワードになってくるのだが、過去を扱う作品は時代考証というのを丁寧に表現する必要がある。衣装や小道具などは特に気を使う必要がある。当時の人達を表現するのに分かりやすい記号でもあるのだが、そこがおろそかになってしまっている。あと選曲も今時の楽曲っぽい。作品を観ようと思っても、見た目が嘘では感情移入しにくいものがある。香ヶ丘リベルテ高校でも書かせてもらったが、作品選びの段階で実現可能か不可能か、もう少し丁寧に検証する必要がある。 いくら演技で頑張っても限界があるのだ。特に微妙な時代設定だと知らない人は知らないだろうが、知っている人は知っている。少なくとも、今の時代にその記憶がある人がいるのだから、そして演劇というものは不特定多数の人が観ることを前提に創るものだから、そういったことも考慮して細心の配慮をする必要がある。


大阪産業大学附属高等学校『ノッキン・オン・どこでもドア』 

ドラえもんの秘密道具ネタという使い古された設定を、自分達なりにアレンジできていてまとまりのよい作品になっている。各キャラクターも出演者の個性を活かせるような配慮もなされている。狂言回しのような役割を作・演出の人が担当しているが、丁寧すぎてテンポが悪い。きっと彼が出ている間、彼を見てくれる人がいなかったように思われる。他の同級生とのやりとりがスピード感ある掛け合いが気持ちよく観れる分、余計に気なってしまった。転換もスマートでスピーディーにしようというのは分かるが、タイミングが合わず少々テンポが悪いのが気になった。前説とカーテンコールがサービス精神たっぷりなのだが、少々やりすぎ感が否めない。ほどほどにしておいた方がよい。



と、以上10校の感想を書きました。
来年も頑張ってください!!